契約書の変更を迫られて困惑する非正規雇用労働者
これって違法なの⁈
5年以上働いたことで「無期雇用」へと転換したパート、アルバイト、契約社員の労働者。あるいは、定年後に「期間の定めのない形」で再雇用されたシニア社員。
そんな非正規・無期雇用のスタッフに対し、会社側が「業績が悪化したから」「シフトの調整をしやすくしたいから」という理由で、「次の契約更新からは、また期間1年の有期契約に戻らせてほしい」と同意を迫ってくるケースがあります。
「正社員じゃないし、会社がダメだと言うなら従うしかないのかな…」と諦めてサインをしてしまいがちですが、ちょっと待ってください。
一度「無期雇用」になった契約を、労働者に不利益な「有期雇用」へと一方的に引き戻す行為は、労働契約法第9조により原則として禁止されており、実質的な解雇手続きに匹敵する極めて高い違法性を孕んでいます。
一方的な変更はシャットアウト!労働者を守る「2つの強い法律」
日本の労働法では、雇用形態(正社員か非正規か)を問わず、一度確定した「雇用の安定性」を会社側の都合だけで崩すことを厳しく制限しています。
- 【労働契約法 第9条(不利益変更の禁止)】:「労働者と使用者は、合意することなく、労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできない」と定めています。いつでもクビを切れる状態(有期化)にするのは明確な「不利益変更」であり、会社が勝手に行うことは絶対にできません。
- 【労働契約法 第16条(解雇権濫用の法理のゆだね適用)】:無期雇用から有期雇用への変更は、労働者から見れば「いつでも契約満了でクビにできるリスク」を背負うことを意味します。裁判所はこれを「実質的な解雇(または雇止め)の地ならし」とみなし、解雇と同等の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の妥当性」がない限り、変更そのものを無効と判断します。
形だけの同意は無効!最高裁が示した「自由な意思」のハードル
「でも、会社に言われて渋々だけど同意書にサインしちゃった場合は?」という疑問が生まれます。実は、日本の裁判では「サインがあっても無効」になる強力な判例が存在します。
山梨県民信用組合事件(最高裁 平成28年2月19日)
労働条件を労働者に不利に変更する際、たとえ労働者が「同意書」にサインしていたとしても、それが会社からの圧力や、拒否しにくい空気の中で行われたものであれば、「労働者の自由な意思に基づく真の同意とは認められない」として、変更を無効としました。
つまり、「有期に戻ることに同意しなければクビだ」「みんなサインしている」などと言われて書かされたサインは、法的には一切通用しないのです。
理不尽な「有期戻し」の要求から身を守る3つの正攻法
無期雇用の安定した権利を奪われそうになったとき、正当に対抗するためのステップです。
- 1. 口頭のやり取りをすべて証拠化する:「なぜ有期に戻す必要があるのか」という会社側の説明を、スマホのボイスレコーダーなどで必ず録音しておきましょう。メールや書面でのやり取りもすべて保管してください。
- 2. 「無期雇用の継続」を希望する旨を書面で送る:会社に対して「私は現在の無期雇用の労働条件での就労継続を希望します」という意思表示を、メールや内容証明郵便などで残しておくと、のちに「合意の有無」を争う際の強力な武器になります。
- 3. 一人で抱え込まず、公的な労働相談窓口へ相談する:労基署内にある総合労働相談コーナーや弁護士に相談し、「会社から不利益変更を強要されている」と助けを求めましょう。専門家が間に入ることで、会社側が違法性を自覚し、要求を撤回するケースが多々あります。
困ったときの公的相談窓口
- 労働条件相談ホットライン: 0120-811-610(夜間・休日も対応の無料電話相談)
- 法テラス(日本司法支援センター): 0570-078374(法的トラブルの総合案内)
- 総合労働相談コーナー(各労働局・労基署内): 労働条件の不利益変更や契約トラブルに対し、民事上の紛争解決の手続き(あっせん等)をサポートしてくれます。
コメント
コメントを投稿